卓話Speech
2024年12月13日(金)(第2724回)例会 No.16
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- msfp株式会社 代表取締役
- 神谷 親宏さん
本日は、M&Aについてお話させていただきます。事業として成り立っているのにもかかわらず、跡取りがいない、事業を継いでくれる方がおらず黒字で廃業しているという会社が、年間や約6万社あります。第三者承継をしているところもありますが、全体の数%しかないとデータも出ています。
なぜこのような話をしようと思ったのかをお話しする前に、新入会員の方もいらっしゃいますので改めて自己紹介させていただきます。
私は大学を出まして、保険会社三井住友海上社に3年間勤務し、リテールマーケットで個人法人の営業の担当をしておりました。その後父の経営する保険代理店へ入社し、現在保険代理店を引き継いで、現在創業60年目でございます。
「M&A(第三者承継)」に考えが及ぶきっかけは、今から10年前、群馬県太田市の関東学園大学経済学部の第1回目の外部講師に招かれ、営業の講義をした時に、営業のプロセスやアイデアを学生にお話しし、どう伝えるかで随分変わるんだということをお伝えしました。若い人たちがスタート地点に立った時に、そのスタート地点に立った時点が、もう既に一歩先に出ている人になってもらいたいという気持ちが芽生えました。
そこで、名古屋市立大学大学院に入学して、今も現在進行形で、経済学研究科の研究生をしています。「進化型実務家教員」として、学べる場があり、今後学生達のに教えたり、伝えたりしたいという思いの中で専攻しています。
あともう一つは、急激な人口減少です。超小子高齢化の日本で、生産年齢人口である若い方が急激に減っていく状態で、東京都でさえ10年後は急激な人口減少が始まると言われています。この1年間で人口が約50万人減っています。50万人減が5年続いたら名古屋市は消えてしまうぐらいのインパクトがあるということです。社会を担っていく若者たち、また子供たちは社会に出た時、否応なく少数精鋭にならざるを得なくなっていきます。個人的には、コンビニの前で屯ろしているような若者たちのままだと、日本が潰れてしまうのではないかと、危機感を感じています。それを回避するためにも、アントレプレナーシップや、営業教育、第二創業(第三者承継)についても、これから社会に出る若者に伝えていきたいと考えています。
また、学んだ学生たちが社会に出た時に、後継がなく、黒字で廃業を選択している会社さんを引き継ぐ選択「第三者継承」をしてみたい、という方を増やしたいと思いました。この事業承継(第三者承継)、これは大切な事なんだということをひしひしと感じておりす。
黒字にもかかわらず、事業は継続できたはずなのに後継者がなく廃業になってしまった会社が年間約6万社と言われています。日本経済にとって大きな損失です。ここを第三者承継により事業継続ができるようなればという思いです。
私は保険の仕事で日本全国の地方都市に行きますが驚くほど人が減っています。私が山梨学院大学を卒業したのは34年前ですが、昨年、山梨を訪れたらゴーストタウンになっていました。恐ろしいぐらい町が急激に衰退していました。名古屋から出てみないとこの感覚は絶対わからないと思います。まだ名古屋は賑わいがありますが、現実問題として、早く手を打たないと、今行動しないと、日本の未来はないなと思いました。技術が消え、雇用がなくなり、地域経済がなくなる、こういった現象が起きています。
直面する後継者の経営問題です。会社を興し、法人でも、個人でも事業をしますと、例外なく5つの出口が出てきます。
清算の場合は結構大変です。地域経済が地盤沈下していきます。従業員さんが毎日通っていた定食屋さんやコンビニ、またその会社さんの取引業者さんたちは、顧客先を失うことになります。そして、従業員の方は再就職のために就職活動しなければなりません。
このような清算する会社がご自身の会社の顧客先だとすると、顧客先が自動的に年間約6万社消えていく、自社の売上も消えていく、というのが現状です。
続いて本題のM&A(第三者承継)です。M&A(第三者承継)を選ぶと、技術と雇用が承継されます。これは素晴らしいことです。日本のものづくりは凄く、技術・雇用を継続することで、地域経済も守られます。仮に御自分の会社を譲渡して売却するとなると、譲渡対価が皆さんに入ります。これが逆の立場から言うと、お客様先が残り、自分のところの顧客が残り、売り上げが継続するということになります。
皆さん羽衣文具さんという春日井市のチョークのメーカーをご存知ですか?
チョークをつくり続けて80年の技術が素晴らしい会社でしたが、2015年に廃業する事になりました。廃業が決まったところアメリカの教員組合から4トン注文がきました。このチョークがどんなものかというと、しなって折れない、手に粉がつかず、黒板に書くと発色が良くとても見やすい、すごく品質が良いチョークでした。この技術は、この会社しかありません。ところが、なぜ廃業したのかというと、社長の体調不良と、お子さんが娘さんばかりで会社を引き継がなかったという事、あとは単価の下落と市場シェアの半減、いろんなことが重なって廃業ということになってしまいました。
そして、この廃業を聞きつけた韓国の塾講師の方が、全財産をはたいて、韓国からわざわざ羽衣文具さんに「この会社を引き継ぎたい」と買い取りに来たそうです。この塾講師は以前、東京に研修に来たときに羽衣文具のチョークをお土産でもらい、韓国の塾で使ったところ、発色がよくて見やすい、と塾の生徒からも好評だったそうです。会社は塾講師へ承継され、韓国に技術も雇用もいってしまいました。今このチョークを買おうと思うと韓国から輸入しないと買えません。韓国の塾講師の方は見る目が良かったのだと思います。まだまだこれから教育が盛んになってくる途上国など、マーケットはまだまだあるので、この会社の売上は伸びています。
誰かが声を掛けていたら、わかっていたとしたら、私が引き継ぎたいという方がいたかもしれません。しかし、このすばらしい技術は、海外に行ってしまって、もう帰ってきません。こういったことがこれ以外にも起きているのです。
M&A「第三者承継」、マッチングの情報量が少なすぎるので、情報の流通について、ロータリーでやれるといいのではないかと芹澤さんに以前お話ししました。
M&Aセンターなどの大手仲介会社は中小零細企業をあまり相手にしません。持っていく仲介手数料は1件最低2,000万円と言われています。会社を譲りたい、承継したい、と思っている人が高額な仲介手数料のため躊躇してしまい、承継がすすみません。この中小零細企業の層への担い手がいないかと僕も調べました。そうしたらあったんです。僕はそこにコンタクトをとって、ジョイントすることを決めて話を進めました。中小零細企業だけに特化したM&A(第三者承継)をやっていきたいなという思いを実現することが可能となりました。
この第三者承継の必要性には問題点が3つあります。
マッチング前はそもそも情報がない、また、準備しておくことが必要で、また、そもそもマッチング自体してないのが一番大きな原因です。
また、マッチングの際、資金を融通するために、銀行にお願いしてお金を借ります。今はあまりやらないかもしれませんが、昔、融資する際は、個人保証、個人担保をとられます。銀行は個人保証を入れているため、なかなか担保が外せないということがあります。
3つ目として、承継後、合併をしたものです。これもやはりなかなか経営統合というのが難しいです。どれも、やはり事前の準備がないからというのが一番問題です。
私の会社も跡取りがいないので、マーケットを全国拡大していますが、まさに自分にも直面している問題です。自分のときに何を考えたかというと、会社の価値がどうなっているのか、買ってくれる会社から見たときに、この体制で安い、買いやすいな、儲かりそうだなと思ってもらえる、そんな仕組みにしておかなければいけないと気づきました。
このみなとRCの先輩方の中には既に事業承継が済んで息子さんが社長や専務をされている方は多いと思います。承継が進まない理由の一つは、やはり高齢化です。僕は70になって子供が二十歳なので、まだまだ僕もやらなければいけません。このグラフを見てよくわかると思うのですが、年齢のことは私自身もすごくジレンマがあります。これは恐らく経営者の方は皆さん同じ気持ちだと思います。
中小企業の現状、負のスパイラルは本当に始まっています。環境の変化、超少子高齢化、後継者不在によって業績は悪化、会社は倒産、清算、雇用喪失、経営悪化、技術消滅。これが今の実態です。本当になくなってしまう前に、手遅れになる前に。
優良企業が毎年消えていくという諦め倒産、諦め廃業、これを何とか無くしたいなという気持ちでおります。第三者承継の支援の現状は、こんな風に書いてあります。380万社のうちの50万社は中小といっても大きい大企業に近い所です。こういった企業は、大手のメガバンクや、M&Aの会社が手数料を取れるからといって飛びつくようにフィーを取りにいきます。私はやるとしたらFA方式、個々にちゃんとアドバイザーがついてやっていくというのが恐らく一番いいと思います。
残り約330万社は、小規模の仲介です。仲介人(FA)と士業の専門家で承継作業をきちっとできるよう道筋をつけてやっていけるだろうなというふうに考えています。現在、その枠組みも進んでおります。
私は日本的M&A推進財団と、ジョイントすることを決めました。全国で800名余りの情報を持たれている士業の方々のネットワークです(主に税理士)。売りたい、買いたい、といった情報を多数持っています。こういった情報を整理して取組んでいきたいと思っています。弊社独自では、沖縄から東北までの地域で連携を検討しております。
「第三者承継の教科書」という本もございます。こういったものを手に取り、ご覧になっていただければと思います。実際、この本の中では、130年続いたかまぼこ屋さんが、身内ではなく、このかまぼこの大ファンだった女性が、今社長となった話が紹介されています。こういったことをどんどん知っていただいて、広めていただきたいなというのが今日の私の卓話のお話でございます。
まさに歴史という縦糸を次世代に承継していく為に、M&Aいう手段ではありますけれども、やはり新しい人材でこういった手段を使って横糸を入れていくような新たな歴史を創造していく手段の一つとして第三者承継があるんだということを皆さんにお伝えして卓話を終わります。
ご清聴いただきましてありがとうございました。
国際ロータリー第2760地区 名古屋みなとロータリークラブ
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- 名古屋マリオットアソシアホテル(17階)
金曜日 12:30~13:30