名古屋みなとロータリークラブ

卓話Speech

2025年9月19日(金)(第2753回)例会 No.9

挫折を乗り越えて

栄 和人様
愛知県スポーツアドバイザー・至学館大学レスリング
部顧問・レスリングモンゴル代表総監督
栄 和人

私の話が皆さんにとって面白いかどうかわかりませんが、今日はこれまでの人生で経験してきたことを、ありのままお話しさせていただきます。

私は奄美大島の小さな集落で生まれ、両親は雑貨屋を営んでいました。子どもの頃から家の手伝いや農作業、稲刈り、サトウキビ刈り…本当に自由のない生活でした。そんな中でも相撲や柔道を通して体を鍛え、中学・高校・大学とレスリングにのめり込んでいきました。

オリンピック出場を夢見て、自分を極限まで追い込みました。でも、ある大会で敗れてしまったんです。それまでの緊張やプレッシャーから精神的に追い詰められ、しばらくは引きこもりのような状態になりました。そんな時、実家に久しぶりに電話をしたら、母が泣きながら「父ちゃん、飯も喉を通らず仕事も手につかず、10キロ以上痩せたよ」と言ったんです。その時、私は電話口で「もう一度4年後のオリンピックを目指す」と約束しました。それが、自分をもう一度立ち上がらせてくれたんです。

現役を引退してからは指導者として、吉田沙保里や伊調馨といった選手たちを育てることになりました。彼女たちは才能も努力もすごかったですが、やはり人間ですからスランプもありました。ロンドン五輪の前、吉田沙保里も調子を落とし、パートナーにも勝てない状態が続いたんです。でも、ある日、先に金メダルを獲った後輩のメダルを見た瞬間、彼女の中にスイッチが入ったんですね。次の日には見事に勝って、三連覇を成し遂げました。こういった姿を見ていると、人は「どこで変わるか分からない」と心から思います。そして、指導者としての私の責任も喜びも本当に大きなものでした。
ただ、その後、パワハラ問題も経験しました。今振り返れば、「選手のため」と思っていた厳しい指導が、もしかしたら自分の自己満足だったのかもしれない…。今の時代は、相手に伝わる言葉、伝え方、そして信頼関係が何より大事です。それはスポーツに限らず、会社でも家庭でも同じだと思います。

そして今、65歳を前にして、新たな挑戦が始まりました。モンゴルから「レスリングを立て直してほしい」と声がかかり、8月には現地で指導を始めました。言葉も文化も違う中ですが、指導した選手たちが世界大会でメダルを取り始めています。正直、今さら海外で…と思う気持ちもありました。でも、どこかで「これは自分の経験が役立つ最後のチャンスかもしれない」と思ったんです。

私はこれまで、苦労も挫折もたくさん味わいました。でも、そのたびに「人との出会い」「タイミング」「そして決断」で人生が動いてきたと思います。年齢は関係ありません。いくつになっても、挑戦はできる。そして、誰かの役に立てるなら、全力で取り組みたい。

皆さんも、ぜひ何かの出会いや機会があったときは、一歩踏み出してみてください。きっと、それが自分の人生をより豊かにしてくれるはずです。
今日は短い時間でしたが、貴重な機会をいただき、本当にありがとうございました。

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